天然ガス鉱業会は国産天然ガス鉱業の健全な発展に寄与する任意団体です
- トップ
- わが国の天然ガス鉱業
- Ⅰ.国産天然ガス資源
Ⅰ.国産天然ガス資源
天然ガスの国内生産状況
国内では、新潟県、千葉県、北海道、秋田県、宮崎県などで天然ガスの生産を行っており、2022年末現在、石油・天然ガス鉱山は58鉱山存在し、年間約23億立方メートルの天然ガスが生産されています。国産の天然ガス生産量は、国内供給量の2.2%に相当しています。(また、国産原油の年間生産量は約47万KL強で国内供給量の0.3%)。
一方、わが国では、胚胎している地質形態で分けることが多く、地層の背斜構造などにガス体のまま圧縮されて貯まっている構造性天然ガスと、地下水に溶け込んでいる水溶性天然ガスの2つに大きく分けています。一般に、構造性天然ガスは熱分解起源、水溶性天然ガスは微生物分解起源と考えられています。国内生産の割合(2022年末)は、構造性天然ガスが76%、水溶性天然ガスが23%です(残り1%は、油田から原油とともに生産される随伴ガス)。
構造性天然ガスとは
構造性天然ガスとは、有機物が地中で変化していく中で、背斜構造や断層などの地質構造の下で、粘土等の不浸透層が帽岩(キャップロック)となって捕われて貯留されたものです。地質構造が鉱床成立に深くかかわっているので、構造性の名がついています。
水溶性天然ガスに比べると、深いところにあり、通常、3,000-5,000m程度の深さの地層から採取しています。地域的には、主に新潟県、北海道、秋田県などで鉱山が稼動中です。
起源は、海の動植物プランクトンや藻類その他の生物が、泥などと一緒に海底に堆積し、これらの有機物が地熱などの影響を受けて、徐々にケロジェン(石油天然ガスへの変化途上の有機物質)に変化し、最終的に、石油やメタン等の炭化水素に変化したものと言われており、熱分解起源です。
地質構造が関わっているので、水溶性天然ガスに比べると油田、ガス田の規模は大きく、探鉱開発の投資費用も大きく、特に、海洋で探鉱開発を行う場合には、巨額の費用が必要になります。
海域における天然ガス採掘
海域における石油天然ガス探鉱は、昭和30年代から始まり、昭和40年代から多くの試掘が行われました。昭和47年発見の阿賀沖油・ガス田(新潟県)、昭和48年発見のいわき沖ガス田(福島県)、昭和56年発見の阿賀沖北油田(新潟県)、昭和58年発見の岩船沖油ガス田(新潟県)が開発に至り、かつては、新潟県沖で3基、福島県沖で1基のプラットフォーム(鋼鉄製の人工島)が稼働していました。
現在は、岩船沖油ガス田のプラットフォーム1基のみが操業を行っています。このプラットフォームは、新潟市から北東に約30km、胎内市荒井浜の沖合約4kmにあり、水深約40mの海域に設置されています。生産は平成2年に開始されました。
海域における生産は、プラットフォームの設置、陸上生産基地に至るパイプラインの敷設等に膨大な費用がかかる上、設置後も資機材輸送のための運搬船や人員輸送のためのヘリコプターの費用が発生し、陸域に比べて操業費が割高となります。
水溶性天然ガスとは
水溶性天然ガスとは、地層中の地下水に溶解して存在する天然ガスのことです。実際には、ガスが、地下水中に極めて小さな気泡となって存在しているものと考えられますが、地下水を汲み上げると地上でガスが放出されることから、水に溶解しているように見えるため、水溶性の名がついています。通常、1,000-2,000m程度の深さの地層から採取しています。地域的には、千葉県、新潟県、宮崎県、沖縄県等に分布しており、特に千葉県、新潟県の生産量が多くなっています。
起源は、地中に埋もれた有機物が微生物によって分解されて生まれたガスであり、微生物分解起源です。水溶性天然ガスを含む地層は、第四紀と呼ばれる地質時代に、大陸棚斜面において発生した混濁流が海底谷を下り、海底に長期間にわたって堆積したもので、海底扇状地を形成していました。混濁流の発生は間欠的に起こり、それにより砂岩・泥岩の互層が形成されるとともに、タービダイトと呼ばれる特徴的な堆積構造を持つ堆積物です。
この地層中の地下水は、塩分濃度が非常に高く、かん水と呼ばれ、地下では大量の天然ガスを含んでいますが、地上に上げてくると大気圧下で天然ガスを放出します。また、かん水は、通常の海水に比べ、ヨウ素を多く含んでおり、副産物としてヨウ素を取り出すことができます。
油田、ガス田、油ガス田の違い
油田、ガス田、油ガス田は、地下に存在する炭化水素の状態で便宜上分けているもので、明確な定義があるわけではありません。地下で油分が多い場合は油田と呼び、地下でガス分が多い場合はガス田と呼び、油ガス両方の場合は油ガス田としています。しかし、地下からの採収物が地上に出てきたときには、油田であっても地下で共存していたガスは分離されて出てきますし、ガス田であってもメタン以外の軽量炭化水素分はコンデンセートとして液体として分離されます。(水溶性天然ガスのガス田の場合は、メタンの割合が非常に高く、コンデンセートが含まれません。)
いずれの場合も、地下からの採収物には、混合比は各々異なりますが、原油、天然ガスのほか地層水や二酸化炭素等の不純物が混在していることがほとんどのため、製品として出荷するためには、原油ガスセパレーターに送って天然ガス・原油と他の物質とを分離し、次に、ガスについてはグリコール・デハイドレーターと呼ばれる装置を通して、ガス成分にグリコールを接触させ残存する水分を除去します。